- 心臓とは
- 心臓病の種類
- 心臓病の症状と検査
- 受診時に教えていただききたい内容
- 以前から狭心症の診断がついている方へ
- 心臓病の悪化を予防するのに気を付けたいこと
- 診察はできる限り、ご家族の方といっしょにお越しください
心臓とは
心臓は、握りこぶし程度の大きさの臓器です。血液を全身に送るポンプとしての役割を担っています。心臓は一日中休まず動いているので、多くの酸素と栄養が欠かせません。その心臓に酸素と栄養を届ける血管を冠動脈と言います。冠動脈は心臓の働きを正しく保つためにとても大切な血管です。
心臓病の種類
虚血性心疾患
(狭心症、心筋梗塞)
虚血性心疾患とは狭心症と心筋梗塞を合わせた病気であり、冠動脈(心臓に酸素を運ぶ血管)が狭くなる、もしくは詰まることで心臓に起きる病気です。
血流が少なくなったサインとして、胸の痛みなどが出現します。血管が狭くなり心筋(心臓の筋肉)が酸素不足に陥った状態が狭心症で、血流が途絶え心筋が壊死した状態が心筋梗塞です。
心臓弁膜症
心臓には血液の流れを調整する4つの弁があります。この弁が正常に動かなくなると、心臓弁膜症という病気になります。心臓弁膜症は2つあり、弁が開きにくくなる狭窄症と、閉まりにくくなる閉鎖不全症があります。
心臓弁膜症が進行すると心臓への負担が大きくなり、心不全に陥る可能性が高くなります。健康診断での心雑音が診断のきっかけとなることが多いため、定期的に検診を受けることが大切です。
不整脈
心臓は電気的な刺激と伝導によって、規則正しく動いています。しかし、伝導が低下したり刺激が乱れたりすると、心臓のリズムが不規則になります。この状態が不整脈です。不整脈は発症しても自覚しにくいのですが、動悸や息切れを起こすこともあります。また、重度の場合は意識を失うこともありますので、早期発見し、治療を行うことが大事です。
心不全
心不全とは病気の名前ではなく、心臓のポンプ機能が十分働かなくなった結果、身体に必要な血液や酸素が行き渡らなくなる状態です。さまざまな心臓病によって引き起こされます。心不全の可能性が高い場合はまず原因の病気を見つけ出し、進行度にあわせて治療をする必要があります。
心臓病の症状と検査
心臓病になると主に息切れや動悸、むくみ、胸の痛み、倦怠感などが起こります。そういった症状が出た時は循環器内科へ相談し、適切な検査や治療を受けるよう心がけましょう。
胸痛
虚血性心疾患を発症すると主に、胸の圧迫感や違和感、喉が締め付けられるような感覚や痛みなどが起こります。痛みは前胸部やみぞおちに生じることが多いですが、首や腕、肩、奥歯などに出ることもあります。このような症状がある場合は医療機関を受診しましょう。
狭心症による胸痛
狭心症による胸の痛みは数分~10分程度で治まることが多いです。冠動脈の動脈硬化による労作性狭心症の場合は歩行や食事、入浴時に痛みが起こりやすく、安静にすることで症状は治まります。しかし、病気が進行すると軽い労作や安静時にも症状が出るようになります。
また、冠動脈が一時的にけいれんすることで発症する冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)の場合は、安静時に症状が起こりやすく、特に就寝中や明け方に起こる傾向があります。
心筋梗塞による胸痛
胸の痛みが30分以上続く場合は、心筋梗塞を発症している可能性があります。この場合は胸の痛みだけでなく、冷や汗や吐き気を感じることも少なくありません。
ニトログリセリンを使用しても痛みが治まらない場合は、救急車を呼び速やかに医療機関を受診するようにしてください。
胸痛がある場合の検査
当院では心電図や胸部レントゲン、血液検査、心エコーなどの検査を行い診断します。心臓CTや心臓カテーテル検査などのさらに詳しい検査が必要な際は、専門の医療機関へご紹介します。
動悸
脈が不規則になる、心臓がドキドキする、脈が遅かったり速かったりするなど、動悸の状態によって原因となる病気も変わっていきます。
脈が飛ぶ、不規則な脈、一瞬だけ脈が飛ぶ
このような症状が出る不整脈を期外収縮といいます。ほとんどの場合特別な治療を行う必要はありません。ただし症状がひどい場合は、薬や心臓カテーテルで治療する必要があります。
ドキドキして息苦しい、脈が速くなる
このような症状が出る場合は、頻脈性不整脈が疑われます。頻脈性不整脈には発作性心房細動や発作性上室性頻拍症、心室頻拍などが挙げられます。
心電図を行うことで診断がつきますが、これらの不整脈は甲状腺ホルモンや貧血が原因となっていたり、ストレスが原因となっていたりすることがあります。適切な検査や治療を受けると、症状が良くなる可能性があります。
脈が遅くなり、めまいや失神を引き起こす
このような症状が出る場合は、徐脈性不整脈の可能性があります。房室ブロックや洞不全症候群などの命に関わる不整脈の可能性もあり、迅速に医師に診てもらうことが重要です。
症状がある徐脈性不整脈に対しては、心臓にペースメーカを入れる治療を行います。
動悸の検査方法
動悸の原因を調べるには、心電図や血液検査、心臓超音波(心エコー)検査、ホルター心電図、トレッドミル運動負荷検査などが行われます。特に動悸がある時の心電図を把握することが重要です。ホルター心電図については1日のタイプと1週間のタイプがあり、症状に合わせて機械を選びます。スマートウォッチでも脈拍数を測定できるため、お持ちの方は診断の参考にさせていただきます。
倦怠感、息切れ、むくみ
軽い作業などで倦怠感や息切れが出現する、顔や足のむくみを認める場合は心不全を起こしている可能性があるため、各種検査を受けていただきます。
倦怠感、息切れ、むくみの検査方法
心臓超音波検査(心エコー検査)や心電図、胸部レントゲン検査、血液検査、尿検査などを受けていただきます。
受診時に
教えていただききたい内容
- 症状がいつからあるか
- 症状が出るときのきっかけや状況
- 症状が出るのは何時ごろか
- 症状の様子(息ができない、胸が苦しい、痛み、めまい、足が重いなど)
- 症状がどれくらい続いたか
- 症状の現れ方(少しずつなのか、急になったのか)
- 症状がどれくらい起こっているのか
- 症状がひどくなっていないか
- 症状の出る回数が増えていないか
- 薬を飲んでいるか、飲んでいる薬が効いているのか
上記の内容は、診察時に重要となる情報です。これらの情報があると検査がスムーズに進み、より早く正確な診断を行い治療へ繋げられます。
以前から狭心症の
診断がついている方へ
以下のような症状の変化がありましたら、迷わずに循環器内科へ受診してください。
- 胸がとても痛くなった
- 少し動いただけで症状が出た
- 休んでいても症状が出た
- 症状が以前よりも頻繁に出るようになった
- 症状が長びくようになった
このような症状が
ある方も受診してください
糖尿病を抱えている方や、脳梗塞の既往歴がある方、高齢の方は胸痛を自覚しにくい傾向があります。よって倦怠感や息苦しさ、息切れ、疲れやすさ、食欲不振などの症状が見られた際は、たとえ胸痛がなかったとしても医療機関を受診することをお勧めします。
心臓病の悪化を
予防するのに気を付けたいこと
温度変化
温度が急に変わると心臓に負担がかかってしまいます。冬の時期は外に出る際に、暖かい格好に着替えるように心がけましょう。特に、季節の変わり目は体調を崩しやすいので気をつけてください。
トイレやお風呂場などの室温を温めることもお勧めします。お風呂は熱すぎないようにして、長風呂を避けるようにしましょう。半身浴もお勧めです。お風呂から出た後はすぐに靴下をはいたり保温したりして、体温が下がらないように注意をしてください。
食事
塩分を控え、バランスの良い食事を1日3食、決まった時間に食べるように心がけましょう。お腹が8分目くらいになるように、食べ物はよく噛んでゆっくり食べてください。
睡眠
食事と就寝時間は3時間くらいあけておきましょう。睡眠時間はしっかり確保するように心がけてください。夜中のトイレが多い、寝ている時に息が苦しい、寝られない、早朝になると胸が痛む、途中で目が覚めて眠れないなどの症状がありましたら、不安定型狭心症や心不全、睡眠時無呼吸症候群などの病気の可能性があります。
特に不安定型狭心症は、心筋梗塞を引き起こす可能性が高いので、先述した症状が見られた際はすぐに医療機関を受診してください。
診察はできる限り、
ご家族の方と一緒にお越しください
診察の時はできる限り、ご家族の方と一緒にお越しください。ご家族の方にしかない視点もありますので、気づいたことがありましたらなんでも教えてください。診断や治療において、極めて有益な情報となります。
発作が起こる危ないサインや対処法、脈の測り方、薬の飲み方などは、周りの方にも知ってもらうと良いでしょう。緊急時には患者様ご本人がスムーズに対応できない可能性もあるので、周囲の方が適切な対処法を覚えておくと、より迅速に対処しやすくなります。
また、心臓病の方に向けた食事制限の内容は、健康な方にとっても生活習慣病予防になります。ご家族と一緒に同じ食事をされる際は、患者様だけ内容を少し変更することを心がけましょう。
分からないことがありましたら、遠慮なくお聞きください。