高尿酸血症とは
血液中の尿酸値が7.0mg/dlを超えると、高尿酸血症と診断され、血液中に溶けきれなくなった尿酸が関節内などに尿酸結晶となってたまっていきます。この結晶を身体が処理する際に痛風発作が起きます。
高尿酸血症は痛風だけでなく、腎結石や尿路結石の原因にもなります。
また、痛風発作を起こさない程度の軽度の尿酸値上昇であっても、慢性腎臓病(痛風腎)や血管疾患(脳卒中や心臓病など)といった病気のリスクとなる可能性があるという研究結果が次々と報告されています。
このため、特に症状がなくても、定期的に健康診断などで尿酸値を確認することが大切です。
高尿酸血症の原因
高尿酸血症の原因は主に①尿酸の産生過剰と②腎臓からの尿酸の排泄低下です。
① 尿酸の産生過剰
尿酸はプリン体という成分が肝臓で分解されて出来る老廃物です。
プリン体は細胞の増殖や代謝を助ける役目を果たすもので、身体にとって必要なものですが、このプリン体が過剰になることが問題です。
尿酸値が高い方はプリン体の摂取を控え、ウォーキングなどの有酸素運動を行う、肥満の方は適正な体重に戻すことなどが重要です。
② 腎臓からの尿酸の排泄低下
尿酸は主に腎臓から尿中へ排泄されます。よって腎臓の機能が低下すると、血液中の尿酸値が高くなります。また、利尿剤も尿酸の排泄が低下してしまいます。
痛風とは
先述の通り、血液中の過剰な尿酸が結晶化(尿酸結晶)して関節にたまり、これを処理する際に痛みが出る状態です。
「風が吹いただけでも痛む」と言われるほどの激痛が、親指の付け根に起こります。
24時間後が痛みのピークで、3から7日ほどで痛みは引いてきます。
痛風の段階
痛風には4つの段階があります。
段階 | 症状 |
---|---|
無症状期 | 尿酸値は高いが、痛みはない時期 |
急性痛風発作期 | 足の親指の付け根(第1中足趾関節)が赤く腫れて、熱感を伴った強い痛みが起こる時期。この痛みは1週間くらいで治まります。 |
間欠期 | 発作と発作の間の時期。痛みはありません。 |
慢性痛風期 | 痛風による結節や痛風腎、尿路結石などが起こる時期。 |
尿路結石とは
尿路結石は、腎臓から尿道までの尿路に結石ができる病気です。血液中の尿酸値が高いことで、尿が酸性となり、尿路結石が出来やすくなります。
時に激しい痛みや血尿が生じることがあります。
痛風腎とは
尿酸結晶が腎臓の尿細管という場所に沈着して腎機能を低下させてしまうのが痛風腎で、腎不全の原因になります。
高尿酸血症の治療
高尿酸血症がもたらす病気の発症や進行を抑えることが治療の目的です。
食事療法
ビールやジュースなどのプリン体の多い飲み物を控え、しっかり水を摂ります。水分を多く摂ることで、尿への尿酸の排泄が増加して、尿酸を体外に出すことが出来ます。1日2リットルの摂取が推奨されています。また、レバーや魚の干し物などのプリン体の多い食べ物を控えます。
肥満の方は適正な体重に戻すことなどが重要です。
食事のポイント
- 適切なエネルギーを取る
- 栄養バランスの良い食事
- プリン体含有食品を控えめに
- アルカリ性食品を十分に摂る
- 水分をたっぷり摂る
- アルコール飲料の多飲は慎む
食品中のプリン体含有量
極めて多い |
鶏レバー、干物(マイワシ)、白子(イサキ、ふぐ、たら)、あんこう(肝酒蒸し)、太刀魚 |
---|---|
多い (200~300mg) |
豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正えび、オキアミ、干物(マアジ、サンマ)など |
中程度 (100~200mg) |
肉(豚・牛・鶏)の多くの部位や魚類、ブロッコリースプラウトなど |
少ない (50~100mg) |
肉類の一部(豚、牛、羊)、魚類の一部、加工肉類、ほうれんそう(葉)、カリフラワーなど |
極めて少ない (~50mg) |
野菜類全般、米などの穀類、卵(鶏、うずら)、乳製品、豆類、きのこ類、豆腐、加工食品など |
運動療法
ウォーキングなどの有酸素運動を行いましょう。ベンチプレスなどの激しい運動は尿酸値を逆に急上昇させてしまうため、控えるようにしてください。
薬物療法
生活習慣の見直しだけでは改善が難しい場合には内服治療を行います。尿酸は6.0mg/dL以下を目標にします。
薬の種類は①尿酸が作られることを抑制する薬(例 ドチヌラド;ユリス)と②尿酸の排泄を促す薬(例:フェブキソスタット;フェブリク)があります。
尿酸値を急激に低下させてしまうと、尿路結石を形成してしまったり、痛風の痛みを生じてしまったりすることがあるため、ゆっくり下げていく必要があります。
当院では、患者様の尿酸値だけでなく、その他の病気などを総合して治療を行っています。